最高裁判所第二小法廷 昭和34年(あ)2388号 判決 1960年6月10日
主文
原判決を破棄する。
本件を東京高等裁判所に差し戻す。
理由
弁護人渡辺靖一の上告趣意第一点は刑訴法違反の主張、同第二点は量刑不当の主張で刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
職権により調査すると、記録によれば、原審は、昭和三四年一〇月五日の公判期日において、本件の弁論を終結した上同年一〇月一九日午前一一時に判決を言い渡すべき旨を告げたところ、其の後、原審は、相被告人島村貞雄の弁護人湯川忠一の公判期日変更申請に基づき検察官の意見を聞いた上、同月一四日、前記一〇月一九日午前一一時の公判期日を同年一〇月三〇日午前一〇時に変更する旨の決定をなし、該変更決定謄本は、その頃、被告人、相被告人島村およびその弁護人等に送達せられたにも拘らず、原審は、右変更前の期日である同月一九日に、被告人およびその弁護人不出頭のまま公判を開廷し、相被告人島村に関する事件を分離し、被告人に対して判決の宣告をした事実が認められる。しかし、判決は、公判廷において宣告により告知されるべきものであり(刑訴四〇四条、三四二条)、その宣告の期日が、いわゆる公判期日であることも刑訴四八条一項二項、刑訴規則四四条一項三〇号により明白である。従って、判決宣告のための公判期日についても、裁判長はその期日を指定するを要し、また該公判期日には被告人を召喚し(尤も、控訴審においては出頭の義務は負わない。刑訴三九〇条本文参照。)、その弁護人等に公判期日の通知をしなければならない(刑訴四〇四条、二七三条)。そして判決の効力はその宣告によって発生するものであるから、判決告知に関する右手続規定は判決に影響を及ぼすべき重要なる規定と解するを相当とする。さすれば、原審の前記措置は、判決の告知に関する手続規定に違反して適法に指定告知された公判期日でない期日に判決を宣告したものであって、原判決には重要なる手続規定に違反した法令違反があり、これを破棄しなければ著しく正義に反すると認める。
よって刑訴四一一条一号、四一三条本文に従い、全裁判官一致の意見で主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 池田 克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)